「現実」と「虚構」の区別はどこにあったのか -『ドラゴンクエスト/ユアストーリー(2019)』

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3行であらわすと、 お母さんに宿題やりなさい!って言われて、うるせぇ!って物理的に殴ってソフト取り返してハッピーエンド!みたいな映画でした。

1.メタウイルスがゲームに侵入???

世界が止まった瞬間にめちゃくちゃイヤな予感がして最悪の最悪だった。

これは虚構への、現実の侵入を許したということ。

思い出のなかに現実が入り込み、ズタズタにした。まずどんな形であれ、侵入された時点で終了です。
ドラクエの世界は独立した世界線を失って、現実と地続きになってしまった。

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この映画がハッキリさせてしまったことは、「架空の人々は現実から操作可能な記号だった」ということ。

冒険だと思っていたものは、ただのシナリオにすぎなかったということ。
そしてこの映画がたちが悪いのは、「虚構が現実を追い返す話」として、一見、虚構の味方であるかのようなフリをしていることです。

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虚構とは、「存在しない場所に存在している」物語です。 現実から、絶対に手出しすることができない場所にあるものです。

宿題やれ!ってソフトを取り上げられようが、友達にカセットを踏み潰されようが、それでも自分が冒険した世界の思い出は壊れない。物理的なものではないからです。

虚構と現実は元々はっきり区別されているからこそ、誰かからバカにされても、取り上げられても、思い出として世界まるごと取っておけるものなのです。

2.オタクの敵は、現実ではない。

オタクの敵は、現実と虚構という違う土俵のものを、同じ土俵で戦わせようとする奴です。

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「アニメイト」×「血液センター」
「女性を性的消費している」とクレームが入って話題になった献血ポスター

オタクは虚構と現実を区別できない存在だと、現実に剣を向ける存在だと、この映画は主張しています。

なぜ、その主張に乗ってしまったのか。

主人公は最初に馬鹿馬鹿しそうな顔で剣を捨て、存在を拒むべきだった。

どうぞどうぞ。 好きなだけ世界を壊してください。この世界をただの無価値なデータだと本当に思っている者なら、主人公に敵だと認められない限り、登場人物になれるはずがない。

バグと戦うのは主人公じゃなく、ゲームのクリエイターでしょうが。現実と虚構をごっちゃにするな。

また、虚構の世界で現実を認識し、そこで物理的にウイルスを倒したところで、現実世界で「現実を見ろ」と言ってくる思想の持ち主には、一切ダメージを与えることはできません

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思想を追い出して「勝ち」とすることは、つまり「ゲーマーはゲームのなかでしか勝てない存在である」ことを自らも認めること。「現実を見ることを拒否した者が、そこで永遠に剣を握っている」ということ。

これのどこが勝利で、何を喜べばいいのか。

「ゲーマーを現実から切り捨てる話」のどこに、ゲームへの愛があるんだろうか。

オタクはゲームから出てくんなって言われて、満足なんですか?

3.この映画を楽しめた賛否両論の「賛」側の方へ

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そっとしておいて。

ウイルスとか、大人になれとか、アンチウイルスの解釈違いで死んだんじゃないんです。
画面がフリーズした最初の瞬間、血の気が引いた人間です。

ドラクエ5もやってない。前知識はゼロ。ワイスピを見ようとしてたところを友達に誘われて来た、何にも知らない初日組です。

でも、あの瞬間に全力で立ち去りたくなった。

ONEPIECEを20年追ってますが、最終巻でこんなことをされたら、泣きながら既刊から何から全巻売ります。 それくらいあり得ない展開です。

この映画が話題になり、最早「酷評してる奴は面白おかしく叩きたいだけだ」などと言われています。

「否」の人は、サブタイトルを見てください。あぁこれが真相だったのか、と納得がいくはずです。

これはドラクエではない。「ユアストーリー」、つまりあなたの物語なんです

なぜVRで遊んでいる他人の人生を、私のストーリーにされなければいけないんだ

私が押し付けられたのは悪夢でした。

あの瞬間の、私の最悪な映画体験を否定できる権利は、誰にも、ない

4.信頼への裏切り行為

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「レストランで食事して、最後に机をひっくり返され水をかけられたけど、それまでの料理がおいしかったからこのレストランは☆4」って判定ができる人も、居るでしょう。
ラスト10分までに点数つけろって言われたら私も多分、似たような評価をすると思います。

でも、出てきたものが同じでも、私は「心をこめて最後までもてなすつもりの前半」 と、「最後に水をかけるつもりだった前半」 を同じものと思えません。

まずかったり、自分にあわない覚悟はしているでしょう。でも、水をかけられる覚悟はしていませんでした。

予想を裏切ることは、信頼を裏切ることとは違います。

フィクションに裏切られたくなかった。
この映画を見て、本当に大きな傷を抱えてしまったと思います。

見たからこそ言える言葉ですが、

見なきゃよかったわ。

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この映画のあと、パッタリ映画を見なくなってしまった友達もいます。

山崎監督はミステリオって感想を書いてる人居て、なるほどなと思いました。
ヴィランなんですね。

この救いのない映画のアンサーは、是非ワンハリで…。

→虚構への愛を感じる映画で上書きしよう

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