泥棒猫ナミと、女狐カリーナ -『ONEPIECE FILM GOLD(2016)』

こんな感想を見かけました。

「カリーナは結局自分の得のためにしか行動してない」

「ナミさんはしてやられてるだけだったので、最後にちゃっかり勝ってほしかった」

まぁ、カリーナちゃん一人勝ちでしたからね。

1.ナミさんにとってのカリーナという女の子

あのですね、ナミさんなんですが、単純にカリーナちゃんのこと、めちゃくちゃ好きなんだと思うんですよね。

当時ずっと泥棒として同じようなことやってて、同じようなピンチを越えてて、14歳のナミさんが唯一関わってた同年代の女の子じゃん、絶対特別な人だったと思うんだ。

あの頃のナミさんっていうのは、アーロン達をずっと側で見てきて、吐くほど「仲間」って言葉が嫌いなんですよね。

「海賊なんかみんな同じよ、人の大切なものを平気で奪って」

海賊は、悪。
同じものにはなりたくない。
だから、悪である海賊からだけ、盗みをはたらく。

アーロンを否定するため、「海賊は悪」「仲間なんてくだらない」という価値観を信奉し、「ほらね」を数えて生きてきたナミさん。

カリーナちゃんが裏切ったときにも、ナミさんは表情ひとつ変えませんでした。
悪党同士の「くだらない助け合い」が嫌いで、悪党同士が掲げる「仲間」に価値があるはずがないと、思っているから。

少なくとも二人の間には、相手のために危険をおかし、自ら囮になるくらいの絆がありました。
でも、ナミさんはそんな経緯を経て来た子なので、他人と馴れ合うことができません。

この二人の関係って、だからきっと、裏切って裏切られてをしてる状態が信頼関係なんですよ。


2.馴れ合わないで居てくれる相棒

原作じゃないのでどこまでの表現を信用していいのかはわかりませんが、ただ願望として、つらいつらい14歳のナミさんに、カリーナちゃんという存在があったことだけはホントに泣くほど嬉しい映画でした。

ルフィに毒されて仲間をまっすぐ信じることを知ってしまったナミさんが、カリーナちゃんにもうっかり同じことをしてしまう。

でもカリーナちゃんは相変わらず、昔の調子で裏切るよ!
あーあ。

っていうのが、今回のGOLD。

アーロンが居る限り、どんな馴れ合いもまやかしでしかない彼女の暗黒時代に、 優しさをがめつさで隠して「泥棒猫!」って言ってくれる女の子。
「女狐!」って言い返せる女の子。
ケンカして、裏切ってくれる女の子。

カリーナちゃんに対するナミさんの態度、普段のナミさんよりツンツンデレデレしてるじゃないですか。
あれが、かつてのナミさんなんでしょう。
「仲間ではなかった」当時のカリーナちゃんとの、「仲良くない」付き合い方をしていた頃の。

ナミさんが誰の支配も受けずに育って出会っていれば、二人が憎まれ口を叩き合う理由はなかったはず。
仲の良いコンビだったかもしれないですね。

3.かつての相棒に起きた変化

そして今、「海賊」で「麦わらの一味」のナミさんは、素直に自分の言葉を言えるし、もうあの頃の「泥棒」ではない。

対してカリーナちゃんは未だに一人であの頃と同じことをやっていて、同じ調子で自らの利益のためだけに「泥棒」を続けている。

ナミさんはきっとそんなカリーナちゃんに安心したんじゃないだろうか。

大概ちゃっかり勝って終わるナミさんが負けて終わるカリーナちゃんが、ナミさんにとってどれだけ特別で、対等で、大事な存在かってこと。

「カリーナ参上!」は別に囮になったワケではない。自分が宝を一人占めしたくて、自分のためにやっただけ。
「私たちは、仲間なんかじゃない。 」
そうやって、言い逃れることができます。

お互いにそうしてきたはずのナミさんが、GOLDでは飛んで助けに来てくれる。
自ら、「チームでしょ」って発言をする。

カリーナちゃんの、驚きの表情。

カリーナちゃんは、ナミさんの変化に気付いた。気付いたけれど、
「私は変わってないよ。でも、変わったあなたを祝福してるよ。」

それが最後の「いい仲間だね」なんだと思います。

ルフィ達のスゴさを目の当たりにした人たちは、ルフィ達を好きになります。
「あんた達、すごいね」「いい仲間達だね」

でも、彼らの活躍を全て間近で見てなお、カリーナちゃんはナミさんだけに声をかける。

カリーナちゃんは、ナミさんにとってずっと「仲間」が特別な言葉だったことにも、気付いていたんじゃないだろうか。
その意味が変わったことにも気付いたんじゃないだろうか。

あのセリフはルフィ達を誉めているのではなく、
「今、ナミは仲間って言葉を使えるんだね、よかったね」
という祝福なんじゃないだろうか。

二人の絆がどれだけ大きいものだったのか、考えるだけで救われる話でした。(私が)

アーロン編、ぜひ読み直してみてね。


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